静岡県熱海は斜面地に建設されたマンションの一室のリノベーションである。
オーナーはアートプロデューサーで原宿のBLOCK HOUSEを運営するギャラリストの伊藤 悠氏である。

元々のプランはベッドルームが一つ、続き間の和室が一つの2LDKであった。
マンションが斜面に対しひな壇型になっているので一辺に大きなルーフテラスがついており、平面上の斜面に食い込むあたりに内側への明かり取りのインナーテラスもついている。
伊藤氏は熱海のアートプロジェクトにて熱海への可能性を感じ、セッションの中で別荘的な機能を含んだアーティストインレジデンスやギャラリー、スタディルームとしての能力を付与する計画となった。

構造以外の雑壁等をすべて排除した際、内部状態は斜面に食い込んだ部分の水回り以外は良好であった。
風呂を中心に水回りの位置は変更せず保全と機能の現代化を行い、プランはギャラリーの機能を確保するためと、アーティストインレジデンスとしてアートと向き合う空間としてベッドルームを排除し0LDKの空間とした。
リビング部分にはメインになるアートウォールを立て、裏側をバックヤード機能としている。
躯体いっぱいまで既存仕上げを排除し、凡そマンションの一室と思えない高さのあるアートウォールの存在は、住居感からギャラリー空間へとスイッチングさせる装置となった。
反面、ゾーニングにて住居感へとまたスライドしていく空間を0LDKとして構成したことは、どこかアートの巣穴に暮らすような空間となった。